昔から『神使い』といわれ、大切にされてきた酉の飾り物。
横向きの姿が愛らしくシンプルなのでお飾りの中でも人気のある祝酉ですが、『とりこむ』ということで商売繁盛にも吉。毎年自営業の方やお店に勤める方へのプレゼントとしても喜ばれています。
宮崎県日之影町のわら細工たくぼさんが稲から育てて作っている縁起飾りです。昨今の異常気象の影響もあり、年によって大きく収穫量に差が出てしまうため数量を確保するのが難しくなってきているのです。ましてや伝統的な棚田での無農薬栽培。天候の影響は甚大です。
よく「しめ縄」や「しめ飾り」と間違われるのですが、毎年ろばの家でご案内しているのは縁起飾りと言って、厄除けや無病息災を祈って飾る、お守りのような縁起物のお飾り。お正月のしめ飾りと違って一年中飾っておくことができます。
次々と各地で起こる自然災害や感染症、世界中から消えることのない紛争や貧困、破壊されてゆく自然。「平和」とは程遠い暗鬱なニュースばかりに囲まれ、いてもたってもいられないもどかしい気持ちになることはあれど、自分に何ができるのかどこからはじめてよいのか、途方に暮れるばかり。せめて世界の平和を、世の中の安泰を祈ることだけでもできたら、とは思うのですが実際のところは日々の雑事に追われ、その気持ちさえ忘れてしまいそうになります。
わたしが宮崎県の高千穂地方で初めてたくぼさんのお飾りに出会った時の感覚は軽い衝撃でもありました。ただ見ているだけでこんなにも清々しく、粛とした気持ちになれるわら細工というものを見たことがなかったのです。
どのお飾りも、とてもとても丁寧につくられていますので自然と手に取る時に丁寧な所作になります。こんな風に自然とわき出てくる畏怖の念や神聖な心持ちというのは、実は今の世の中にもっとも不足しているものではないかと思います。毎日、何事もなく平和に暮らしている。その奇跡のような事実に感謝する機会がなかなかないのです。それこそ、突然の事故や病気に見舞われるまで意識することがありません。
どうか明日も、平和な一日でありますように。
願わくば、世界も平和に近づいてくれますように。
ひと綯い、ひと綯い、祈るように丁寧につくられたたくぼさんのわら細工。それぞれの形には意味やいわれがありますので、よければ店頭でそちらも読んでみてください。毎年ひとつひとつ違う形のお飾りをそろえてゆくのもまた年を重ねてゆく喜びです。
*「しめ縄」と「縁起飾り」の違い
日之影町のある宮崎県高千穂郷では「しめ縄」もしくは「しめ飾り」とはお正月飾りをさし、ここでご紹介しているわら細工とは別の形状をしているものです。
縁起飾りはお正月に限らず一年を通して普段の暮らしのそばで使っていただけるよう通年制作されいるわら細工です。とはいえ、新調してお家に迎える日をお正月に合わせる方も多く、実際年末に向けて需要の高まる傾向があります。飾る場所や方角については特にルールがあるわけではなく、ご自身、ご家族が心地よく過ごせるよう目の届くところにお守りのように飾っていただければ嬉しいです、とのことでした。
>>>以下、たくぼさんからのメッセージです。
わら細工たくぼでは、山あいの棚田で稲作を営み、地元のしめ縄をはじめ、願かけ飾りや生活用具など様々なわら細工を手がけています。制作の行程に機械仕事は一切なく、全て手仕事で心をこめて制作しております。
素朴なカタチの向こうに、神話の息づく里山の暮らしや願いを感じていただけましたら幸いです。
わらについて:製作には、お米をとった後のわらと稲穂が出る前に刈り取った青わらの大きく2種類を使用しています。お米をとった後のわらは、素朴な質感と強さが特徴で、掛け干しという古来からの稲の乾燥方法によって確保されます。
青わらは時間とともに静かに色が変わりますので、その自然な変化もお楽しみください。
創業六十余年。電灯の技を継承・発展させた手仕事です。里山より素朴なカタチをお届けします。
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作家:わら細工 たくぼ(甲斐 陽一郎) (宮崎県)
※画像をクリックすると全体像がご覧ください。
※約35×20㎝。(年によって前後します。)
※手作りのためひとつひとつ色・形が微妙に異なります。
※ご覧のモニターによって、若干色調が異なる場合がございます
取扱い:高温多湿な場所に長時間置きますとカビが出ることがあります。その際はよく天日干しして刷毛などでカビを落としてください。お酢を含ませた布で拭くと効果的です。