ろばの家

むかしは田舎の故郷の街に明治屋さんがありました。中学時代の私はお小遣いを握りしめて明治屋さんへ繰り出したものです。お目当てはチェックの蓋の輸入もののボンヌママン。コンポートやマロンペーストを異国への憧れから購入したものです。
進学して下宿先で暮らしてるうち、いつのまにか故郷の街は寂れ明治屋の路面店も姿を消しました。
ろばの店さんを利用するたびわくわくしたあの頃の思い出が蘇ります。フレッシュで美味しいジャムやトマト、海を渡って来日した特別な味。自宅で味わう異国への憧れ。
少女時代に味わったボンヌママンのコンポートの瓶は、旅先の外貨のコインを入れて大事にとってあります。
ラッセラの瓶が空いたら、何を入れようかな。それまでどんな風に異国を味わおうか。ほろ苦いグレープフルーツのジャムはここではないどこかへ連れて行ってくれるような味がしました。