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タコにカミナリ、トリ、お化け…。クスッときたら沼田病。

出ました出ました!春恒例の新・ヌマタ!一昨年は新・ゴジラ。昨年はインベーダー。今年は…??

毎年陶器市で新作をお披露目してくださるのがなんとなく恒例化してきた感のある沼田智也さんの絵付け。今年はフェイントして、陶器市前に高萩の工房を襲撃してしまいました。昨日窯出しししたばかり、という出したてホヤホヤの作品たちが、工房の外のテーブルや棚にズラリと勢ぞろいして待っていてくれました。目新しいものだけを探しに来たわけではなかったはずなのに、どうしても見たことがないと「あれ?コレ新作ですか?」と聞いてしまいます。

これはクラゲでしょう?これは蝶でこっちはエビ、カニ…と見知った顔に挨拶しながら、ひとつひとつお顔を拝見してゆくと…いたいた、いましたよ。見たことのない新顔が!

「こ、これはもしや…お、オバケでは?」
「ははは、見つけちゃいました?」
「あ、これもだ。あ、こっちにも。」「おっかちゃん、こっちの棚にもいるよ」と、パパろばと二人でもうオバケ探しです。「あれ?これってなんか…い、一反木綿じゃないですか!なんか、めっちゃ情けない顔してるんですけど…」
「まあ、木綿100%じゃないんでその辺は許してください」
「そうですね、かなりヘナヘナしてますもんね(笑)。」と、なんのこっちゃかほとんど意味不明です。…というわけで、今回の新作の目玉はどうやら『お化け』のようです。

「沼田さん、これも何かから突然変異で生まれちゃったんですか?ズバリ、飛行機だな。」「そうですそうです。飛行機描いてるうちにちょっとヨレちゃって、お化けっぽいなと…」…えっと、実を言うと正確に飛行機と言ったんだったか、鳥と言ったんだったか忘れてしまったのですが、とにかくまあ、既存の定番柄だったと記憶しています。飛行機シリーズの親は千鳥、海月シリーズの親が雨笠、松模様がインベーダー、まだほかにもいろいろあったと思いますが、とにかく偶然何かが何かっぽく見えたことがきっかけで、新しいシリーズの図案、モチーフが浮かぶということが多々あるようです。

わたくしママろば、一度でいいからその運命の進化の場面に立ち会ってみたい。「あれ?ちょっと見てくださいよ。コレ、〇〇に見えません?」っていうシーンに。その瞬間が見たいというよりは、その後一気に筆が乗ってくる沼田さんを見てみたいのです。今回のお化けだって、きっと飛行機かなにか描いている途中で偶然「お、なんかコレお化けっぽいな」というところから今度は意識してお化けを描いてみて「お、悪くないかも」となり、さらに「ここをちょちょいと角ばらせて…と。お化けはお化けでも一反木綿の出来上がりってね…なんかちょっとヘナッとしちゃったな。まあ、化繊も入っちゃって木綿100%じゃないから気合足りないぞって感じでいいか。上手いなオレ」とまでは言ってないでしょうけど(笑)

「じゃ、これでもかってお化け集合してもらいますか。どれどれ、これもいいじゃん」とオバケ文の総柄が生まれたり。間違いなくどこかの時点で「お化け」が乗り移っちゃった瞬間があったはずなのです。そうなった時の沼田さんを見てみたいのです。「俺が描いてるんじゃないんだよね、勝手にお化けがふわわ~って動き出したんだよね」と、これまた使い古されたセリフのようですが、きっとそんな感じなのではないか、と勝手に想像してしまうのです。なんて楽し気なんだろう!

毎年なんとなく新柄が登場していますが「何か新作を生み出さなくては」とむむ~~~う、と腕組みして新しい柄を考え出す、ということはこれまで一度もなかったようです。何かの模様が何かに見えて、それがキッカケで新しい図案となり、面白いモノはシリーズ化して…。何度も何度も描いているうちにその文様をその文様たらしめる核となる部分が確立し、今度はあえてその核からはちょっとズレた異端児も登場させちゃう。その外し具合がとても洒脱なのです。それはもう絵の上手下手というよりは、人としてのウィット、ユーモアの問題という気がします。余裕がないとこういう遊びができないのではないかと思ってしまう。お化けの中の一反木綿のように。様々な表情のお多福文様の顔たちに混じってヒゲチョビンを登場させてみたりするように。古典柄の写しさえも、どこか飄々と気の抜けたゆるいキャラが生まれてきてしまう。雷神しかり。七福神しかり。オトナ女子(自分で書いていて恥ずかしくなるのだけれどそれが一番言い得ている気がする)が好きそうなアンティークっぽい花模様。淡くはかない呉須で描かれた、繊細で華奢な草花文のシリーズも、今回初めて見ました。

それぞれの文様、見れば見るほど「クスッ」と来てしまいます。雷神様なんてぶさカワイイというか、怖いんだか可愛いんだかよくわからない不思議なキャラです。雲の上から身を乗り出して、雷を振らせちゃうぞと必死に下界をかき回している姿は、いたずらっ子そのもの。びっくり目を剥き、驚いた表情をしてみせているのはタコ。この鳥人はなぜ青くなっているんだろう?今にも駆け出しそうな間抜けな鳥、風に吹かれる柳でさえも何か寂しげに、思うところがありそうなストーリー性を感じさせてしまう。何度も繰り返し描き続けてきた花唐草は今や、沼田柄の真骨頂。赤絵も染付も気品があり、良家の子女といった清楚なたたずまいで、ただただウットリです。

クスッとくるかウットリ見とれるか、いずれにせよこの個性的なうつわたちから目が離せなくなってしまったら、それはもう沼田病に感染している可能性大。次はどんな柄が飛び出してくるのか楽しみで仕方なくなってしまうのです。重症になってくると、新作が出るたびに蕎麦猪口でも小皿でも酒杯でも、とにかくどれか一つでも手に入れなくては、いてもたってもいられなくなるらしいですよ。どうぞ、お気をつけあそばせ(笑)。